ゆう珈琲開業前のラインアップ選定時、
「これは好き嫌いもはっきり別れるし売れない可能性の方が高いけど、美味しいのは間違いないからラインアップに加えておこう」
という経緯でラインアップ入りしたドミニカ共和国のプリンセサ ワイニー。
開業後、何度もブログに登場させた甲斐あってか今では人気1位を独走する人気商品となったのは嬉しい誤算でしかありません。
特にTs氏の思い入れはかなり強いので今後もブログに頻出するだろうなと思います。「またワイニーか」と思わずお付き合いくださいますようお願い申し上げます。
さて、このプリンセサワイニーの生産主であるドミニカ出身のアルフレッド・ディアス氏ですが、彼なくしてワイニー誕生はあり得なかったでしょう。
コーヒーそのものの話ではないですが、折角ですのでA・ディアス氏の紹介記事を書いておこうと思います。
個人的には見習わなければなと思うことが山積みです。
底知れぬバイタリティ
A・ディアス氏は42人兄弟。日本の感覚では想像もつかない大家族です。
しかし、ディアス氏19歳のときにお父上が急逝されます。一家を支えるために、ディアス氏は仕事を求めてドミニカを離れアメリカNYに渡ることに。
レストランや倉庫会社で働いたあと、20代前半にして自分で倉庫を購入し独立。詳しい年齢は分からなかったのですが19で渡米していますから4〜5年ということになります。チャレンジ精神というか恐れない強さというか、この辺りが後のワイニー誕生にも見られるのではと思います。
事業が軌道にのるとNY市内にスーパーマーケットを展開し、成功を収めます。
しかし32歳のときにスーパーをNYの義両親に売却し、自分は祖国ドミニカ共和国に戻ります。
文章にしてしまうと数行ですが、もうここまでの話で50歳ぐらいまできてても良さそうなほどの高密度です。あのままNYで事業を継続する選択肢もあったと思うのですが、それでもドミニカに戻ったのは望郷の念なのか、もしくは息を吐きたかったのか。
いずれにせよディアス氏は祖国ドミニカに帰って来ます。
コーヒー生産の道へ
若干時期が前後するのでこの辺は曖昧なのですが、スーパーを売却する2年前にはシバオ地区のコーヒー農園を購入していたようです(不確実ですみません)
ドミニカに帰郷したディアス氏はドミニカ内陸部のシバオ地区にある町、ハラバコアに移住。
シバオ地区は標高800〜1500mで肥沃な大地の一大農業地帯。
そこでコーヒー生産を目の当たりにしたディアス氏は自身もコーヒーの魅力にとりつかれます。
当店で扱っているもう1つのドミニカコーヒー「カリブマウンテン」は同じドミニカ共和国でも南部のバラオナ地区で生産されています。
バラオナ地区は海岸沿いに広がる大コーヒー産地。生産量でもメインの産地です(バラオナAAなどが有名です)
「ハラバコアは小さな町で、メインのコーヒー産地ではなかった」ことが、結果的にプリンセサワイニー誕生に結びついていきます。
あくなき情熱と探究心
日本の農業にも似たようなことが言えると思いますが、小さな産地というのは先祖代々受け継がれてきた方が多く、情報も入ってこなかったり遅れがちです。
ハラバコアについてもそんな状況だったようで、昔からやってきた生産方法がそのまま踏襲されていました。
特に当時はドミニカのコーヒー協会はあまり機能していなかったらしく、外部の情報(最新の生産技術や病害虫対策、カップ オブ エクセレンスの情報など)がまるで入ってこなかったようです。
どういう経緯か知りませんがドミニカ共和国はコーヒーの輸入も禁じていますから、コーヒーの鎖国状態です。
しかしさすがはディアス氏、積極的に情報や技術を学び時には自ら海外の農園を訪問し、やがてナチュラル精選でのコーヒー栽培にとりかかることを決意します。
過去何度かブログに書いていますが、ナチュラル精選(コーヒーの果肉がついたままの状態で実を乾燥させる)は乾燥に日数を要するのでブラジルのように乾季と雨季がきっちり分かれている地域に向いた精選方法です。
天候の変わりやすいカリブ海沿岸でナチュラル精選に挑むのは相当な手間と苦労です。
中には「何やってるんだあの新入り」などと思っていた人もいたかも知れません。
が、ディアス氏は毎日自ら農園に足を運んでは異常がないか様子を確認し、ついにドミニカ共和国生まれのナチュラルプロセス、プリンセサワイニーを誕生させ、2007年のドミニカコーヒー協会(CODOCAFE)主催の品評会では第2位を受賞。
巡り巡って当店で取り扱いするに至っています。
そろそろ還暦を迎えるディアス氏ですが、そのバイタリティはいまだ健在。
今でも農園を毎日訪れ(1つではないです)より美味しいコーヒーを求め続けています。
この底知れぬ熱意・探究心・バイタリティには頭が上がりません。
夏バテしているヒマはありません。
より良いコーヒー豆屋となれるよう精進していきたいと思います。
そして、プリンセサワイニーを飲んでいただける際、ほんの少しでも彼の努力や生産に従事してくれている方々のことを想っていただければ幸いです。
ではでは。